みなさんこんばんは。
今回は逆転の世界史 覇権争奪の5000年を読んだ感想です。
(2018年出版)
以下、書籍より引用した文章については下記のボックスで囲みます。
著者は?
著者は玉木俊明氏です。
京都産業大学経済学部教授です。他著にヨーロッパ覇権史、帝国の興亡などがあります。
印象に残った内容は?
本書籍では、人類の文化史5000年を中心に、商業的な視点で振り返った書籍です。
もともと歴史的には中国が栄えていたが、ヨーロッパがどのように覇権を広げ、さらに今、中国が覇権を握りつつあるのかについて紹介しています。
逆転とは、そのようなヨーロッパの転換を示しています。
貧しくなかった狩猟生活
狩猟採集から農耕生活に移ることで、人々の生活水準は向上したと考えられてきたが、実際にはその逆だった。例えば、ギリシアとトルコで発見された骨格からは、氷河期末期の1万年前の狩猟採集民の平均身長は、男性が5・9フィート、女性が5・5フィートであるのに対し、前3000年の農民は、それぞれ5・3フィートと5フィートであり、むしろ狩猟採集民の方が身長が高いのである。ここから、狩猟採集民の方が、栄養状態が良かったということが推測できる。
この内容には驚きました。私も狩猟採集民の方が栄養状態が悪いと考えていました。
現代に生きる狩猟採集民のサン人も、1日2140キロカロリーを摂取しており、十分量確保しているようです。
他にも、アメリカで発掘された骨格からも、農民の栄養状態の悪さがわかっています。
中国はヘゲモニー国家にはなれない
一帯一路により、中国はヘゲモニー国家になろうとしているようである。しかし、それには成功しないだろう。なぜなら、世界経済の活動が活発になることで中国に自動的に金が入ってくるシステムを開発しようとはしていないからである。
中国の破竹の勢いはみなさんが知っていると思います。しかし、ヘゲモニー国家にはなれないそうです。
それは、お金を稼ぐしくみです。
第一次世界大戦前は、イギリスがヘゲモニー国家でした。なぜなら、電信を開発し、ロンドンで決済するシステムを作ったからです。つまり、世界が発展すると、イギリスに手数料が入ってくる仕組みでした。
しかし、中国はそういった仕組みを作ってはいないので、ヘゲモニー国家にはなれないとの推測をしています。
最近、クラシック名曲全史という書籍を読みました。
その中で、世界で一番勢いのある国を測る方法として、音楽文化があるそうです。
バブルの時の日本は、世界各国の音楽家を高いお金で招待していたそうです。今は中国が同じように、世界中の音楽家を招聘しているようです。ヘゲモニー国家になれなくても、勢いがあるのは中国で間違い無いですね。
ドイツ、イギリスの発展
ドイツとイギリスの工業化の大きな違いは、植民地の存在であった。イギリスは広大な植民地をもち、新世界から輸入される綿花を本国で完成品である綿織物にするというシステムを形成したが、植民地をあまりもたないドイツにはそれができなかった。そのため、重化学工業に投資し、人工的にナイロンなどの化学繊維を開発したのである。
これは勉強になりました。
第一次世界大戦前に何故、ドイツが化学先進国になったかですが、植民地を持たないため、そうならざるを得なかったのが理由のようです。
本書籍で、ドイツの工業化に大量の資金が必要だったとありますが、どこからその財源を確保したかわかりませんでした。一体、どのように資金を捻出したのでしょうか。
一方で、アメリカは植民地を持っていませんでしたが、広大な土地を持っていたため、自国内で生産ができていたようです。
感想
今までの歴史を簡便に、なおかつ商業的発展に絞り紹介しています。
本書で特に印象に残ったのは2点です。
1つは、転換点、つまりグローバリゼーション。もう1つは、ヘゲモニー国家の移り変わりです。
人類は、三度グローバリゼーションを経験しているそうです。
1つは、ホモ・エレクトスがアフリカからユーラシア大陸に拡散したこと。次に、ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界に広がったこと。そして3度目が、大航海時代にヨーロッパ人が世界に広がったことだそうです。今現在の広がりは、この第三次グローバリゼーションの一部だそうです。
人類の旅には、ロマンがありますね。
ヘゲモニー国家の移り代わりですが、最初はオランダが三十年戦争の終結とともに独立したことです。しかし、英仏戦争により、弱体化し、ナポレオン戦争を終結させたイギリスが台頭します。しかし、第一次世界大戦により弱体化し、アメリカ合衆国が代わりにでてきます。第二次世界大戦終結とともに、アメリカがヘゲモニー国家になります。そして、現在アメリカが衰退し、再び昔のようにアジアが台頭しつつある状況だそうです。
本書は、色々新しい発見がありました。
歴史好きの自分としては満足な内容です。
過去にアジアが衰退したのは、中国皇帝が大型船の建造をやめてしまったことが原因だと考えられます。
それにより、大航海時代のヨーロッパの台頭を許してしまいました。
トップの少しの決断で、一気に自国が敗れるのは、現代の会社に通じるところがあると思います。
商業関係(航海)で歴史を知りたい人は、オススメの書籍だと思いました。