みなさんこんばんは。
今回は「決戦」の世界史-歴史を動かした50の戦い-を読んだ感想を書いていきたいと思います。
歴史上転機となったと考える50の戦いについてまとめまれているため、非常に勉強になりました。
著者は
著者のジェフリー・リーガン氏は、歴史学の教師から軍事史家に転向した方です。ABC放送やヒストリー・チャンネルなどの番組顧問を務めた軍事史のエキスパートですが、2005年に亡くなっています。
監修は森本哲郎氏で、朝日新聞社に務めた後、東京女子大学教授に就任し、そのあとはフリーの評論家として活動されています。何十冊もの本を出版されていますが、森本さんも2014年に亡くなられています。
内容は?
紀元前480年のサラミスの戦いから、1991年の湾岸戦争までの50の歴史を変えた戦いについて書かれています。
各項目は、その戦いが起こるまでの背景、指揮官や戦闘の様子、その戦争の結果とその戦闘がもたらした影響について書かれています。
印象に残った内容
勢力の趨勢がなんとなくですがわかりました。
もはや高校の時の世界史の記憶は私にありませんが、本を読んだイメージだと、以下のような勢力の隆盛にまとめられるかと思います。
政略の隆盛
ローマ→ビザンティン帝国軍(東ローマ)→アラブ軍→モンゴル軍→オスマン帝国→スペイン艦隊→イングランド→フランス→スウェーデン→ロシア→フランス→プロイセン→第一次世界大戦→第二次世界大戦→アメリカ
個人の感想ですが、イギリスが昔から強いですね。言ったら日本と同じで、周囲を海に囲まれており、尚且つ近隣の国の数が多いので、同盟などうまく使うと、自国を守りつつ、ユーラシア大陸に好きなタイミングでちょっかいをかけられます。
逆に日本は、近隣の国は韓国、中国なので同盟することもできないと言ったことが考えられ、興味深かったですね。
開発された戦法も、歴史順にまとめると以下のようになるかと思います。
戦法の隆盛
ローマの重装歩兵ファランクス→ゴート族重騎兵→イングランド長弓→機動型マスケット軍隊(槍兵とマスケット銃兵の混成)→ドライゼ銃(後装式)→機関銃→戦車→航空機
有名なものではファランクスがありますが、重騎兵に蹂躙された後、重騎兵の突撃が1000年ほど猛威を振るいます。その後、マスケット銃が開発されても、次に紹介するグスタブ・アドルフが考案したサーベルチャージのおかげで、騎兵の有用性は第一次大戦まで見られます。
全くの蛇足ですが、軍靴のバルツァーで、騎兵の突撃が強力に描かれていますが、機関銃によって騎兵の時代が終幕した様子が描かれています。
スウェーデンのグスタヴ・アドルフ
北方の獅子王と呼ばれた英雄です。
ラテン語、ドイツ語、オランダ語、フランス語、イタリア語を話すことができ、さらにスペイン語、ロシア語、ポーランド語、スコットランド語、英語なども理解していたそうです。
彼が行った主だった軍事改革は以下になります。
- 徴兵制を導入
- 士官の数を増加
- 旅団を創設
スウェーデン式大隊を生み出しました。槍兵方陣後方に銃兵を置き、さらに後方に予備銃兵を置くことで、効率的な火力の支援が可能な戦略です。
当時はカラコール(騎兵が速歩で前進し半回転し射撃)が主流であったが、サーベルチャージ(騎兵が疾駆して切り込む)を使用して騎兵の火力を向上させたことも有名です。
ドライゼ銃(ニードルガン)の強さ
それまでの前装式銃は射程が長かったが、連射が遅い特徴がありました。ドライゼ銃は毎分5発撃て、伏せながらの装填も可能だった。
1866年の普墺戦争で、プロイセン軍がドライゼ銃を運用してオーストリア軍に圧勝しました。
感想
勝利の要因について
戦争の歴史を見ると、兵力も大事ですが、兵の指揮系統や士気も重要に思いました。
他には、一度の成功体験で、同じ戦略を使用して失敗したり、前の戦いで英雄になった人が増長して、下士官の助言を聞かずに失敗することも多いですね。
味方同士の足の引っ張り合いも戦機を損なう一つの要因に思いました。
人数差があるときは、隙を見て敵を攻撃することが重要で、機会を逃すと勝てなそうです。
また、戦力差があっても油断は禁物で、士気の低さで敗北する可能性もあります。特に傭兵や、異なる部族を束ねる場合は要注意ですね。
国では、先述しましたが、イギリスとロシアが強いなという印象です。
イギリスは海に守られているので、制海権を渡さなければ安心して戦うことができるのと、上陸されても敵国との距離が長くなり、補給線が長くなることが一つの強みですね。
ロシアも、冬を味方につけると、敵の進撃を無効化できるので、そういった意味で守りやすい地形だと思います。
簡単にまとめると、雪国や島国は守りやすいですね。
同じ地名
セダンの戦いが1870年と1940年に行われ、どちらもフランスがプロイセン、ドイツに敗北しているのが気になりました。
同じ場所がやはり戦場になるんだなという感想と、ドイツとフランスの確執が気になりました。今の日本と韓国も仲良くありませんが、ドイツとフランスも仲良くないのでしょうか?
他にもフランスはあまり戦争で良い思いをしていないイメージです。100年戦争もジャンヌダルクが処刑されましたし、ナポレオンも最後は負けました。フランスに詳しくないですがどうでしょうか。
槍兵や騎兵の趨勢
銃の連射力が高くなったことで(機関銃の開発)で騎兵が消えました。確か、第一次世界大戦までいたはずですが、どうでしょうか。近世の騎兵の運用は伝令とかが多かったのでしょうか?
他にも、槍兵がいつから完全にいなくなったかが気になります。
1704年のブレンハイムの戦いでは、すでに槍兵はいなかったような絵が散見されます。接近戦の装備は銃剣になっています。
時代を遡ると、1643年のロクロワの戦いや、1644年のマーストン・ムアの戦いでは、槍兵の記述があります。このころはまだ、槍兵が主力だったようです。
一方、ネット上で記述を漁ると、17世紀にソケット式の銃剣が導入されたことで、パイク兵が消滅したとありました。17世紀の歴史を詳しく知れば、槍兵の歴史が出てきそうですね。
私個人としては、歴史書でかなり上位に入るこの本です。
もっと歴史の知識がある上で読むと楽しめそうに感じました。