みなさんこんばんは。
今回はファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?上を読んだ感想です。
多くの心理学の本で引用されるこの本が気になったので読むこととしました。
以下、書籍より引用した文章については下記のボックスで囲みます。
著者は?
著者はダニエル・カーネマン氏です。
認知心理学者でプリンストン大学名誉教授です。2002年には心理学者でありながら、ノーベル経済学賞を受賞しています。
翻訳は村井章子氏です。
経済や経営などの書籍を翻訳されています。
印象に残った内容は?
タイトルにあるように、人間にはファスト(システム1)とスロー(システム2)な思考があります。システム1は、直感に関連しており、システム2は熟考に関連しています。
それらの思考を検証した実験を含めて、心理学で明らかになったことについてまとめられています。
集中力と瞳孔の広がり
それは、瞳孔が知的努力を敏感に示すバロメーターになる、という指摘である。二桁の掛け算をやっているとき、瞳孔はかなり拡がる。もっと難しい問題になると、さらに拡がるという。この観察は、知的努力に対する身体的な反応が感情的覚醒とは異なることを示唆していた。
集中力と瞳孔の開き具合に相関があることには驚きました。
また、集中量の限界を越すような課題を課すと、瞳孔は開くのをやめ収縮するそうです。これは、つまり降参しているということなのです。
この研究結果は、非常に面白いと思いました。人を好きになると瞳孔が開き魅力的に見えるのも、相手に集中しているとのことですかね。
疑問に思ったのは、逆は成立するかです。つまり、瞳孔を広げれば、集中力が上がるのか疑問に思いました。暗い部屋の方が私は集中力が上がるのですが、それは、瞳孔の開き具合と相関があるのですかね?
また、日常会話では、瞳孔が開かないということで、普段の会話はそれほど集中力を必要としていないなど、心理学は改めて面白いと思いました。
少数の法則
バスケット選手が続けざまにシュートを決め、いわゆる「当たっている」状態を「ホットハンド」を獲得したと言う。このホットハンドの存在は、「事実」として選手にも監督にもファンにも当たり前のように受け入れられている。~中略~
プロ・バスケットボールでは、フィードゴールでもフリースローでもホットハンドは存在しない、というものである。もちろん、シュートを正確に打てる選手とやや劣る選手はいる。だが入ったシュートと外したシュートの順番は、完全にランダムであることが確かめられた。ホットハンドの存在は、ランダム性の中にすぐさま秩序や規則性を見つけ出してしまう目の迷いにほかならない。つまりホットハンドは、広く信じられている認知的錯覚だと言える。
私もバスケットボールをやっていたのでわかりますが、ノッている状態というのはあると思います。しかし、統計的に見るとそれはランダムだということです。
これこそ少数の法則のせいなのです。圧倒的に統計数が少ないので、見かけ上そう見えてしまうことがあります。例えば、コイントスを10回するのと、1億回するのでは、10回は限りなく面か裏に偏るのが想像できますし、1億回では限りなく面と裏の回数が等しくなることは想像できます。
この認知的錯覚は誰でももっており、科学的には危険なバイアスだと思います。なぜなら、もし成功してしまったら、それが運なのか実力なのかわからないからです。しかも、多くの場合は、自分に才能があると過信してしまいます。
私もブログをやっているのでわかりますが、一度成功した人がそれで商売を始めて、失敗するケースをよく見ます。例えば、~で成功したので、その方法を30万で紹介しますと。しかし、多くの場合は、それはたまたまなのです。
筆者も、小さい標本の結果は錯覚に過ぎないと主張しています。
平均への回帰
教官が訓練生の操縦を誉めたときは次回にへたくそになり、叱ったときは次回にうまくなる。そこまでは正しい。だが、誉めるとへたになり、叱るとうまくなるという推論は、完全に的外れだ。教官が観察したのは「平均への回帰(regression to the mean)」として知られる現象で、この場合には訓練生の出来がランダムに変動しただけなのである。教官が訓練生を誉めるのは、当然ながら、訓練生が平均をかなり上回る腕前を見せたときだけである。だが訓練生は、たぶんそのときたまたまうまく操縦できただけだから、教官に誉められようがどうしようが、次にはそううまくはいかない可能性が高い。同様に、教官が訓練生をどなりつけるのは、平均を大幅に下回るほど不出来だったときだけである。したがって教官が何もしなくても、次は多かれ少なかれましになる可能性が高い。つまりベテラン教官は、ランダム事象につきものの変動に因果関係を当てはめたわけである。
これも先ほどの少数の錯覚と同様に認知的錯覚の一つです。
私自身もYoutubeやブログで再生数が上がると、これは〜を工夫したからだと思いがちですが、実際は単純にランダムな動きなのです。
これは本当によく見かけます。ありがちなのが、ある動画の再生数が高いから同じ系列の動画を上げようと思いアップロードすると、再生数は最初と比べて下がります。つまり、最初の再生数が高すぎて、平均に戻ったんですね。
このような認知的錯覚を知っているのと知らないのでは、これからの人生損すると思ったので、しっかりと認知しておきたいと思いました。
感想
心理学面白いという内容でした。
アマゾンの評価では、読みにくいなどの意見も多々ありますが、私自身非常に面白かったです。
最近刊行されている心理学の本を読んでも、基本的にはファスト&スローで書いてある内容を含んでいることが多いと感じます。
以下、印象に残った心理学的な効果です。
- プライミング効果:事前に聞いたことがその後の判断に影響する。
- 単純接触効果:接触回数が増えるほど好感度が増す。接触しても安全ということから、生物が生きることの判断に使っている?
- アンカリング効果:最初に接した目安が、後の判断の目安になる。
- 感情ヒューリスティック:好き嫌いによって判断が決まる。
当然他にもたくさんの認知心理学的なことが紹介されています(ハロー効果など)。
中でも重要だと思うのが、先述しましたが認知的錯覚です。
先ほども挙げましたが、感情ヒューリスティックでは、内容が妥当かではなく、好き嫌いで判断します。
少数の法則では、たまたまうまくいったことでも母数が少ないことから、このままうまくいくのではないかと思ってしまいます。
平均への回帰も同様で、うまくいったことは次に平均に近づくことが多いです。そのため、付加的な要素を加えても、影響しないことが多いです。
以前の会社で研究所に働いていたので、バイアスには気をつけていました。
しかし、認知的錯覚は意識していないと深みにハマってしまいそうなので、より注意したいと思いました。
本書では、筆者が行った実験や、他の人の実験を引用しつつ、つまりどういうことなのかを章ごとに分けて書かれています。
海外の年配の人が書いた書籍なので、アマゾンにも書いてあった通り、冗長で読みにくいと言う方もいるかと思います。
しかし、上巻は300ページほどの書籍であり、私が以前読んだ700ページもしくは500ページある「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義完全翻訳版やSHOE DOG 靴にすべてを。よりも読みやすいと思うので、心理学に興味があって、実験が面白いと感じれる人は読んで損はないと思います。
本当に、認知心理学の面白さがつまっていると感動した書籍で、また後講釈など気をつけるべき点を教えてくれた良書です。客観的判断を大事にしていきたいですね。